東京地区の鉄スクラップは高水準で続く輸出の契約残消化を背景に湾岸相場が上昇。入荷が薄れた一部電炉が買値（炉前価格）を引き上げ、相場が続伸した。指標となる東京製鉄の宇都宮工場は１１日からＨ２相当の買値（炉前価格）を５００円上げ、周辺の電炉も値上げに動いた。ただ、品種対応や様子見に転じたところもあり「調整値上げ後の上昇材料が見当たらない」と指摘する流通も。東鉄が小幅の上げにとどめたことを、天井感と捉える向きもある。相場は５月連休後に、反落する可能性も出てきた。　湾岸シッパーの高値提示と関東電炉の買値引き上げを追い風に、関東相場は強含みの展開になっている。東鉄宇都宮工場の買値はＨ２相当でトン当たり３万２５００円を回復し、関東の電炉買値はトン３万１５００―３万２５００円となった。半面、割高感を嫌った西日本からの引き合いは減少する傾向にある。中心値以下に据え置くシッパーも見られるという。　専門商社によると、関東湾岸から３月３０―４月５日に船積みされたなた豆ハミガキは３月２３―２９日より１万９１００トン多い５万５４００トン（うち輸出４万８２００トン）と大きく伸びた。一方、６―１２日の予定数量は前週比３３００トン増の５万８７００トン（うち輸出５万２４００トン）。関東鉄源協同組合をはじめ、シッパー・商社の配船が集中し、輸出船積みをけん引した。　輸出市場では為替の円安進行を受け割安感が浸透。東南アジアはＨ２相当で本船渡し価格（ＦＯＢ）３万３０００円前後を提示している。だが、韓国は同３万１５００―３万２０００円と伸び悩んだまま。在庫増や製品環境の低迷を抱える現代製鉄は、日本との成約を回避。他の韓国電炉も現地の買値を下げており、日本の提示価格に難色を示しているとされる。　ただ、千葉県の問屋は「この先には強弱両材料があり、なた豆歯磨き粉の市況を見通しにくい」と明かす。足元で好調な輸出の契約残消化は５月連休前に一段落する見通しだが、関東電炉の集中操業と重なるため需給は急速に締まる公算が大きい。条鋼需要の底堅さも好材料だ。また、世界の粗鋼生産は全体に増加しており、現時点で割安な関東スクラップの調達増が期待される。　これに対し、弱気材料としては大三製鋼や中央圧延の事業撤退、朝日工業の製鋼休止がある。問屋筋は「今は吸収できているが、地域の生産量が落ちた影響は小さくないのでは」と警戒する。電炉の販価是正が滞っていることも懸念材料。関東との価格差が縮小した西日本からの調達減も想定されるほか、韓国向け輸出価格の伸び悩みも足かせとなりそうだ。

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